アキレス腱炎とは

アキレス腱炎とは、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)と踵(かかと)の骨をつなぐ人体で最も太く強い腱である「アキレス腱」に、微細な損傷や炎症が生じる疾患です。
主に、走る・跳ぶといった動作を繰り返すことでアキレス腱に負荷が蓄積し、組織の修復が追いつかなくなることで発症します。
臨床上、かかとの後ろが痛む症状はひとまとめに「アキレス腱炎」と呼ばれることが多いですが、厳密には炎症が起きている組織によって以下の2つに分類されます。
| 項目 | アキレス腱炎 | アキレス腱周囲炎 |
| 炎症の部位 | アキレス腱そのもの | アキレス腱を包むパラテノン(腱傍組織) |
| 痛みの見分け方 | 足首を上下に動かすと、痛む場所が一緒に移動する | 足首を動かしても、痛む場所が移動しない |
| 特有の症状 | 慢性化すると腱が肥厚し、しこりになる | 動かすとギシギシときしむような摩擦音を感じる |
| 治りやすさ | 比較的血流があるため治りやすいが、肥厚すると難渋する | 血管が乏しい部位のため、治癒に時間がかかりやすい |
アキレス腱炎の原因

アキレス腱炎は単なる「使いすぎ」だけでなく、複数の要因が絡み合って発症します。
-
オーバーユース(使いすぎ):ランニング、ジャンプ動作(バスケ、バレーなど)、剣道など、地面を強く蹴り出す動作の繰り返しによって腱に過剰な牽引力がかかることが最大の原因です。
-
柔軟性の低下と加齢:加齢に伴い、腱そのものの弾力性や水分量が低下します。また、ふくらはぎの筋肉が硬くなっていると衝撃を吸収しきれず、アキレス腱にダイレクトに負担がかかります。実際に2025年のFerreiraらの研究報告でも、アキレス腱炎患者は健康な人と比べて足首の背屈可動域(つま先を上に向ける動きの範囲)が低下していることが指摘されています。
-
足のアライメント不良(構造的要因):扁平足や過回内(かかとが内側に倒れ込む状態)など、足裏のアーチが崩れていると、歩行やランニングの着地時にアキレス腱にねじれるようなストレスが加わり、炎症を起こしやすくなります。
-
環境的要因:クッション性の低いシューズの使用、ヒールの高さの急激な変更、アスファルトなど硬い路面でのトレーニングも発症の引き金となります。
症状の特徴

アキレス腱炎の症状には、初期の段階で「気のせいかも?」と放置されやすい特有のパターンがあります。以下のような症状に当てはまる場合は注意が必要です。
-
始動時痛(朝の一歩目の強い痛み):朝起きてベッドから降りた最初の一歩や、長時間座っていた後の歩き始めに、かかとの後ろに「ズキッ」とした鋭い痛みが走ります。就寝中などに足首が伸びた状態で固まり、歩き出しで急に引き伸ばされるために起こります。
-
動かしていると痛みが消える(ウォームアップ効果):歩き始めは痛いものの、しばらく動かしていると血流が良くなり痛みが軽減・消失する傾向があります。この特徴があるため、「治った」と勘違いして無理をしてしまい、症状を慢性化させるケースが後を絶ちません。
-
圧痛と腫れ・しこり:アキレス腱を指でつまむと強い痛み(圧痛)を感じます。症状が進行すると腱自体が腫れて太くなったり、触ると硬い「しこり(肥厚)」ができたりします。
-
運動中・運動後の痛みの悪化:症状が悪化するとウォームアップ効果がなくなり、運動中やジャンプ着地時にも常に痛みを感じるようになります。さらには、つま先立ちができなくなり、日常生活の歩行すら困難になる場合があります。





